犬の避妊手術・去勢手術する理由・しない理由(大型犬はまずしないことを考える)

WSAVA (世界小動物医師会)が避妊手術・去勢手術を行わない方が良いと推奨している!
というSNSでの発信について私が読んだ内容(と感想)です!
(もしかしたら誤解がある可能性も否定はできませんので正確にはWSAVAのHPで確認してください!)
WSAVAガイドライン改定の内容とは
今までは「みんな必ず生後6ヶ月で避妊・去勢やっといた方がワンちゃんネコちゃんの為にいいよ!」と言われていたのですが、2024年のガイドラインの改訂の内容を正確に読み解くと
「責任あるご家族の下では、【避妊・去勢はやらなくてもいい】が推奨される場合があるよね!」
と書かれています。
犬種によっては手術しない。を第一に考えましょう。でもご家族さまめっちゃ大変だから、それができるならね。難しければ、こう考えていってね
という指標が示されています!
なので、その子ごとに手術を行うか行わないか、かかりつけ医さんと良く相談して決めて下さい!
というスタンスに変わりました。
「避妊去勢手術なんてやっちゃダメ」ってSNSで見るのですが、そうではなく「やらなくていい場合もあるよね。」がニュアンスとしては正しいのかなと思います。
そこら辺をまとめてみました!
(やらないを推奨と書かれているので、そこを切り抜きされてしまっていますが、条件付きでやらないを推奨なので、その条件がめっちゃ厳しいです)
「何もしない(手術をしない)」ことが最も推奨される選択肢となるケースがあります。
.A 大型犬、超大型犬のメス(避妊について)(特にゴールデンレトリバー)
これまでは約半年齢で子宮と卵巣をすべて取るのが標準でしたが、大型犬では成長期のホルモンが骨の健康に不可欠であるため以下の優先順位で検討します。
1.何もしない (まずはこれを考える)
ホルモンを維持することで、股関節や膝(特に前十字靭帯断裂)の病気のリスクを抑えられます。
子宮や卵集、乳腺の病気などのリスクはありますが、定期的な検査を行いましょう
(半年毎くらいの血液検査やエコー、乳腺の触診などは必ず行う。これが責任あるご家族の下の指標の1つです。また他には運動の徹底や、ドッグランなどには行かない。などがありますが、この後に記載します)
2.新しい手術方法(1が難しいなら次に考える)
赤ちゃんができないように「子宮だけ」を摘出し「卵巣」を残してホルモンを維持する方法を優先的に提案すべき
としています
(これも同じく定期的な検査が必須です)
3.薬による一時的な性ホルモンの制限
飲み薬や注射などで、一時的に発情を抑える方法もあります(一時的なので基本は投薬がずっと続きます)。
4.従来の手術(全摘出)をする場合
手術を行うケースでは、体がしっかり成熟する(1歳から1歳半以降)まで待つべきです。早すぎる手術は関節への悪影響が大きいため避けます。(ただし避妊・去勢手術の難易度は上がります)
ガイドラインには小型犬も成長後まで避妊手術は待った方がいいかも、という内容はありましたが
- 小型犬の明確なエビデンスがないこと
- 早めの避妊には特にメリットもあること
より、一概に成長後まで待った方がいいとは言えない感じでした。
B.大型犬のオス(去勢について)(特にゴールデンレトリバー)
オスも同様に、早くに去勢すると足腰のトラブルが劇的に増えることが判明したため、以下の順で検討します。
1.何もしない
男性ホルモンを残すことで筋肉や骨が理想的に発達し関節の病気を防げます。攻撃性などの行動は、手術ではなく「しつけ」で対応します。
(女の子同様、定期的な検査や、ドッグランの使用を控えるなどの注意点があります。)
2.新しい手術方法
睾丸を残してホルモンを維持したまま精子が通る管だけを切って生殖機能だけをなくす方法です。これにより、ホルモンの恩恵を受けつつ、繁殖を防げます。
(望まない妊娠は避けることができますが、未去勢の場合には攻撃性が上がるため、やはりご家族の方の厳格な管理が必要です)
3.薬による一時的な制限
一時的にホルモンを抑えて様子を見る方法です。
(定期的にずっと投薬が必要です)
4.従来の去勢手術をする場合
少なくとも骨がしっかり成長しきるまで (生後1歳~1.5歳)遅らせるべきです。早すぎる手術は、特に関節のトラブルを引き起こすリスクが高まります。
C. なぜ変わったのか
足腰への影響
大型犬が若いうちに手術をすると、関節の病気になる確率が上がるというデータが多数あります。
がんのリスク
特定のがん(骨肉腫や血管肉腫など)は手術をしていない犬の方がなりにくいことがわかってきました。
肥満
手術をすると代謝が落ち、太りやすくなるリスクも指摘されています。
(これは以前から言われています)
この指針は、保護施設などの特殊な環境を除き一般家庭で飼われている大型犬については
「安易に手術をせず、ホルモンを維持して健康を守る方法を第一に考えよう」
というご家族さまへの教育と提案を重視しています。
(ただし、徹底した管理と定期検査が必須なので、ご家族さまの負担は非常に増える形になります)
避妊・去勢による関節疾患のリスクについて
今日は避妊、去勢による関節系の疾患のリスクについてです。
これは
- 骨の成長に性ホルモンが大事だよないと関節がしっかり育たないよ
- ちなみによくある成長期にもご飯を制限しているのも良くないよ
です!
一部の獣医師や看護師さん、トレーナーさん、ブリーダーさんが成長期にも食事の制限を設けますが、
性ホルモンと同様、成長期の栄養はめちゃくちゃ大事なので吐かない程度にある程度たくさん食べさせてあげてください!
体型を整えるのは成長期が終わってから行えば十分です!
前十字靭帯断裂の発症率 (ゴールデンレトリバーさん)

未避妊だと約1%
1歳~くらいで避妊すると約2%
6ヶ月齢未満で避妊すると約7~11%

未去勢だと約0%
1歳~で去勢すると約3%
6ヶ月齢未満で去勢すると約5~8%
関節炎(股関節形成不全、肘関節)
残念ながら数字でのデータは発見できませんでした。ですが避妊・去勢をすると股関節は痛くなる確率が上がるようです。
これは避妊・去勢しないからといって発症しないわけではありません。ある程度高い確率で関節炎は発症するでしょう。
避妊・去勢を行う場合、関節に関しては少なくとも1歳までは待った方がいいというデータです!
ただし、特に避妊手術の難易度はしっかり上がります。
獣医の立場からすると、ある程度の年齢になってからの避妊手術はリスクあがるんだよな
です。
でも「大型犬さんのために技術を磨くしかないですね。最近では1歳から関節ケアしましょう。」なんてのもありますが、当院ではまだそこまではしておりません。
太り過ぎ、痩せすぎ、どちらも関節や病気のリスクになるので、極端な体重制限 (アバラがめっちゃ触れる)やお菓子の食べ過ぎに注意です!
ストレスについて
これが特に「責任あるご家族の下では」の理由の1つになっています!
例えばドッグランの使用は許可されていません。
後は散歩の時とかも他のワンちゃんとの一緒にわちゃわちゃっていうのは基本やめましょうね、という感じです。

避妊・去勢をしないことで上がる病気のリスク
避妊・去勢手術を行わないことによって上がる病気のリスクもあります。
女の子:子宮蓄膿症や乳腺腫瘍
男の子:精巣腫瘍、肛門周囲腺腫、会陰ヘルニア、前立腺過形成
それらのリスクが確実に高くなるというのは分かっていますので考慮してあげてください。
行動面への影響(マーキング・攻撃性)とペットホテル利用の注意
行動のところで言うとマーキングが酷くなりやすかったり、どうしても攻撃性が強くなりやすいということは分かっています。
これはホルモンが残っていれば仕方のないことです。
ペットホテルなどの利用もあまり望ましくない感じでした。預かり施設の利用はちょっと気をつけましょうね、というニュアンスが書かれてます。
繁殖できないストレスについて
繁殖できないストレスはやはりあると言われています。生き物は必ず子孫を残したいという本能があるからです。
ただ相手が近くにいない状況だと「子供作りたいのに作れない!」は起こりづらいとも言われています。
ペットホテルに行ったり、ドッグランに行ったり、お散歩でワチャワチャなどの行動は発情のスイッチが入りやすくなってしまうので、他のワンチャンと会ったりするのは避けてくださいね
ということらしいです
他のワンちゃんと関わることができないこと自体がストレスになる子もいます。
そこも考慮しなくてはいけない1つと言われてますね。逆に、他のワンちゃんと関わるのが苦手なワンちゃんは全く気にしなくていい要素です。
マウンティングについて
他には、未去勢・未避妊のワンちゃん達はマウンティングしやすくなる子が多いといわれています。
その管理も少し難しくなると思います。
ご家族が必ず責任をもってしっかりと面倒見るように、とのことです。
マウンティング自体は性的な意味合いもありますが、ストレスを発散させる行動の1つとも言われています。
他のワンちゃんと遊べないだったりとか、ドッグランで全力で走れないなどでストレスが溜まってしまってやっていることもあるので、ご家族さまが全力でわんちゃんと遊んであげてエネルギーを発散させることが大事なようです!
特に未去勢の男の子に関しては支配欲みたいなものが出てきてしまうので、支配欲もマウンティングをする1つ要素となります。
なぜ未避妊・未去勢の子たちがマウンティングだったり、ちょっと暴れん坊っぽくなりやすいかというと、男の子のホルモンとか女の子のホルモンというのがあるせいです。
興奮の沸点が非常に低くなりやすいと言われています。要は性ホルモンがあると興奮しやすいのです。
ちょっとした刺激ですごく興奮しやすいので、マウンティングを行いその興奮エネルギーを発散させようとするから、未避妊・未去勢の子達はマウンティングを良くするのです。
未避妊・未去勢
↓
興奮しやすい身体(性ホルモンの影響)
↓
マウンティングしたい
↓
すると怒られる
↓
イライラする
マウンティングしたい
という悪循環になります。
さらにここでドッグランなどで全力で体力を使うこともできない、というのも悪循環をさらに悪化させます。
ですので、責任をもてる家族の下では避妊去勢をしない選択肢も考えましょう、となっているのです。
私見:責任あるご家族としての注意点
ここで私見を入れさせてください!
「WSAVAで大型犬(特にゴールデンレトリバー)は避妊去勢をしない選択をまずは考えるべきと記載されているから、去勢避妊はしません!」
「でもドッグランに去勢避妊をしていないと使用してはいけない。なんてルールはないからドッグランは行く!」
というのは少し違うのかと思います。
やはりガイドライン通りに未避妊、未去勢を選択するのであれば、同じくガイドラインに記載のある「責任をもてる家族の下」が条件になるので
- ドッグランに行かない
- 他の犬とワチャワチャしない
- 家族が全力で遊んであげて、家族の間でストレスを減らす生活習慣を全力でやる
- 定期的な検査を必ず行う
べきだと思います!

\大事な我が子の一生に一度の手術です/


避妊・去勢手術と腫瘍の関係
避妊手術・去勢手術と腫瘍の関係についてです。
(大型犬、主にゴールデンレトリバーについてのデータがメインです)
一応4つ
- 血管肉腫
- 骨肉腫
- リンパ腫
- 肥満細胞腫
この1部の癌に関しては、避妊去勢手術をしない方が発症する確率が低くなるよ!というデータが出てきています。
ただしワンちゃんやネコちゃんで気をつけなければいけない病気は腫瘍のみではありません。
避妊去勢をしないと一部の腫瘍の発症確率は低くありますが
- 乳腺腫瘍
- 子宮蓄膿症
- 卵巣腫瘍
- 精巣腫瘍
- 会陰ヘルニア
- 肛門周囲腺腫(良性腫瘍)
- 前立腺過形成
などに関してはなりやすくなるのでかかりつけの先生とご相談ください。
では1部の悪性腫瘍のリスクが低くなるよというデータです。
これは主にカリフォルニア大学などが数万規模。かなり大きなデータで出しています。
すべての犬種で一律に低くなるわけではなく大型犬、特にゴールデンレトリバーで発生率が低くなるとデー夕が出ています!
血管肉腫(発症率)

避妊しているゴールデンレトリバー7.4%
未避妊のゴールデンレトリバー1.8%
つまり避妊をすると発症率が3.2倍上がる

去勢しているゴールデンレトリバー1.54
未去勢のゴールデンレトリバー1.1%
去勢すると1.4倍上がる
骨肉腫
これも特に大型犬です。
ロットワイラーさんの場合 (発症率)

未避妊だと約5.0%
1~3歳くらいで避妊すると約10.0%
1歳未満で避妊すると約25.1%

未去勢だと約12.6%
1~3歳で去勢すると約17.4%
1歳未満で去勢すると約28.4%
これはだいぶ発症率が変わってくる印象ですね!これだと、やはり未避妊、未去勢を選ぶメリットは大きい印象が出てきます!(私見)
リンパ腫の発症率

ゴールデンレトリバーさん

未避妊だと約1.3%
1~3歳くらいで避妊すると約1.3%
1歳未満で避妊すると約1.1%
これは逆に1歳未満で避妊すると発症率が下がるデータがありますが、微々たる差です

未去勢だと約3.3%1~3歳で去勢すると約4.8%
1歳未満で去勢すると約9.6%
肥満細胞腫の発症率

未避妊だと約0%
1~3歳くらいで避妊すると約5.7%
1歳未満で避妊すると約2.3%

未去勢だと約0%
1~3歳で去勢すると約0%
1歳未満で去勢すると約2.3%
今回示したエビデンスは、2013年にUC Davis校で出された論文からのデータです。
(Torres de la Riva et al. 2013)
論文によってデータの偏りがあるため、このデータが絶対というわけではありませんが大規模な研究の結果ですので信頼性のあるデータだと思います。
(違うデータを見たことがある方はいるかもしれませんが、論文によりデータが変わってくるので、どの論文を引用したかにより変動があります)
あくまでこのデータによるとですが、小型犬は手術であんまり変わらないよ、と現時点では言われています。
避妊・去勢と寿命の関係
別の側面から見るとアメリカのjournal of American animal hospital association という団体のsilverさんたちが調べた超大規模データによると(2,370,078頭のワンちゃんを調べたらしいです)、去勢や避妊をすることによって寿命が伸びますよ!という明確なデータが出ています。
なので全体的に見たらやはり去勢避妊をする方が長生きする、という見解に変わりはないのですが、ワンちゃん全体での寿命を示したデータですので、もしかしたらゴールデンレトリバーさんやロットワイラーさんを単独で見たら未避妊・未去勢の方が長生きするかもしれませんね。
現時点では私の知る限り、ゴールデンさんやロットさんに絞った未避妊・未去勢の寿命のデータはないと思うので、今後の研究によってより正確な手術をした方がいいのか、しない方がいいのかが分かってくるのだと思います。
まとめ

『1部の大型犬、超大型犬では悪性腫瘍の発症率が避妊をしない去勢をしないことによって下
がるので、大型犬はまずは避妊をしない去勢をしないをまずは検討して!
ただしご家族さまが責任を持ってストレスを下げるようたくさん遊んでね、
定期的な検査をしてあげてね』
というWSAVA さんからの提案です。
みなさん揃って避妊・去勢をしましょう!という時代ではなくなったということです!
もしかしたら今後、小型犬さんや猫さんでも避妊・去勢をしない選択肢が出てくるかもしれません!
\大事な我が子の一生に一度の手術です/




